一般的なケーブルの被覆で最も普及しているのがビニール素材を使用したもので、内部の銅線を守り絶縁を行うという重要な役割を果たしているのはもちろんのこと、一定の強度と柔軟性を持ち合わせていることから取り回しもしやすく、さらにコストが最も安いという多くのメリットがあります。
しかし、常温の環境で利用できるなら全く問題がありませんが、寒冷地で利用する場合にはさまざまな課題があります。ビニール素材は氷点下などの低い気温の環境に晒されることで凍り付いて固まってしまい、円を描いたり角で折り曲げて這わせるなどの加工が困難となります。
また、さらに低温に晒されることで低温脆性が発生し、僅かな力が加わるだけで砕けてしまうほど脆くなってしまうこともあります。それらを解決するために登場したのが合成ゴムの一種であるゴムキャブタイヤケーブルで、最もハイグレードなタイプでは優れた耐油性、耐候性、耐熱性に屈曲性能も加わり寒冷地での使用でも取り回しのしやすさが向上しています。
しかし、ビニール素材と比較すれば取り扱いがしやすいものの、凍り付いた際には同じように固まる現象が発生するのも大きな課題でした。そこで登場したのが、寒冷地向けのシリコンケーブルの存在です。シリコン素材であれば高温では最大で150度程度、低温ではマイナス60度程度までの耐性を持っており、世の中のほとんどの環境に対応できます。そんなシリコンケーブルは、これまで砂漠地帯や高温多湿のエリアの一方、北極やシベリア、冬季のスポーツイベントなどの寒冷地からの中継に使用する機材に接続するケーブルとして利用された実績があります。